うつ病の旦那が死んだはなし(5)
■虫の知らせ
こんな辛い想いをして、二人別れたのだから、あなたは一日でも早く、新しい人をみつけるんだよ。それが、オレの願いなんだからね。
彼が言い続けた、私への願いでした。なので、小まめなメール連絡や、突然の来訪は、酔って荒れた時の彼の暴言の火種となっていました。いいから、オレにかまうな、と。オレに連絡する時間があったら、違う人との未来を探せ、そう言うメールが何通も届き、これは酔っているなと感じた私は、しばらく彼への連絡を絶ちました。彼も、私の連絡先を携帯から消去したようでした。
そんな時、私と彼との共通の友人から、連絡が来ました。「様子のおかしいメールが私の所に届いたんだけど。。。」
全く、文章が打ててないメールでした。
添付の画像では、顔を怪我しています。
泥酔しても、文章が打てない事は今までもありません。これは、絶対におかしい。しかも、私の友達にこんなメールを送るのは、私に気づいて欲しくて連絡してるのではないか、そう思いました。
でも、この状況で私が乗り込むのは、お互いに危険なのではないか。いや、行くべきだ。ひどく、ひどく、悩みました。彼の実家は、私と彼がたまに会ったりしていることは、知りません。ここで私が乗り込むと、話が複雑になってしまう。。。離婚し他人になると、出来ない事がたくさんあります。
それでもこの4年半の彼の行動を思い返しても、これはおかしい。胸騒ぎは止まりません。夜もほとんど寝られず、仕事も手につかず。会社の昼休み、お昼ご飯を買いに外に出た足で、私はそのまま、地下鉄に乗ってしまいました。彼のアパートへ、向かいました。
灯り取りの窓は少し開いていて、テレビがついていました。中にいる様子ではあったけど、テレビ番組は、昼に彼が見るような番組ではありませんでした。おかしい。私は、ドアを叩き、中に何度も呼びかけました。それでも、出てこないので、あきらめかけた時、中からドアをやっとのこと、彼が開けてくれました。
「なんで。。。分かったの?」
彼の一声です。
「妙なメール、Kちゃんに送ったでしょ?何をしたの?」
「え・・・覚えてないや。人って、なかなか死なないものだね。ゆうべ、睡眠薬全部飲んだんだ」
腰が抜けそうになった一言でした。あれだけ気を張って過してきたのに、今になってここで、遂に自殺未遂をしてしまった。。。彼が夕べと言っているのは、1日前の事だと判明しました。つまり、1日以上、睡眠薬で眠り続け、その途中で送った、全く文になってないメールだったようです。
ある理由があって、顔に怪我をした彼。それが引き金でした。
とにかく病院に連れて行きたく、ただ、彼の性格上、自分で睡眠薬を飲んだとは、医師の前では言わないと思い、顔の怪我を理由に病院へ連れ出しました。
待合室でも、元気は全くありません。顔に受けた怪我のことを、ひどく気にしていました。細かい理由を書くと、安っぽく伝わりそうなので避けますが、私には、いかに彼が深く傷ついたか、怖いほど理解できました。
病院では、怪我の薬だけをもらい、お腹がすいたと言うので、彼の好きなアイスとカップラーメンを買って家に戻りました。
「美紀子が来てくれて・・・良かったわ」
死んじゃダメでしょ、とか、もう死なないと約束して、など言いたい事はたくさんあったけど、声になりません。本当はこの時、彼に触れたかったけど、それすら受け付けない、落ち込みようでした。
夕方5時ごろまでいたのに、何を話したか、思い出せません。覚えているのは、買って来たカップラーメンを二人で食べたことです。これが、二人で食べた、最期の食事になってしまいました。最期の食事がカップラーメンとは、なんとも二人らしい、そんな気がしてしまいます。
彼の母親とバトンタッチし、私は彼の家を後にしました。
その足で、彼の主治医の元へ行きました。先生いわく「彼の飲んだ量なら、安心です。多分、バカなことをしたなって、今頃反省しているでしょう」と。「ただ。。。彼に渡している抗うつ剤は、2人に1人が死ぬ量なんだけど、多分大丈夫でしょう」、そう先生は言いました。
毎月、病院からもらっている薬を入れている箱とは別に、今まで飲みきれなかった薬が別の場所に溜まっている事が気になったけど、それは怖くて先生の前で口に出せませんでした。
あの薬・・・こっそり取り返さないと。
いやな予感は、膨れ上がるばかりでした。
<つづく>














